【テーマで読む】子どもの心とからだを考え・支える人のために――雑誌「教育と医学」と関連書籍

慶應義塾大学出版会では、1953(昭和28)年から、子どもの「教育」と「医学」「心理」を通して、子どもの育ちを支える情報を発信する雑誌「教育と医学」を刊行しています。

ここでは、子どもに関する様々な問題を扱った書籍と「教育と医学」を、4つのテーマに分類して紹介します。

 

1. 特別支援教育(教育支援などを中心に)
2. 子どもの心(児童心理、心理臨床を中心に)
3. 発達障害(児童精神医学、小児医学を中心に)
4. 子どもの学び、授業(教育学、教育問題を中心に)

※本を選びやすくするために、書名の後ろに以下のマークを付しています。

◎すぐ役立つ(臨床・実用)・・・より臨床的、または実用的な内容ですぐに役立つ書籍
☆もっと学ぶ(理論)・・・より理論的な内容でもっと学ぶ上で最適な書籍

1. 特別支援教育(教育支援などを中心に)

「教育と医学」では、創刊当時(1953年)から、すべての子どもへの教育を主張してきました(すべての子どもへの教育が義務化されたのは1979年)。創刊当時の伝統を継承しながら、さらに特別支援教育の充実と発展をめざし、理論と実践の両輪を重視し、特別支援教育をリードする本と雑誌を刊行しています。

a. 全般

『東日本大震災と特別支援教育――共生社会にむけた防災教育を』
◎すぐ役立つ(臨床・実用)
田中 真理、川住 隆一、菅井 裕行 編著
あなたの学校、災害対策は進んでいますか?災害でさらに弱者へと追い込まれる障害を抱える子どもと家族たち。東日本大震災下でのその実態報告と、特別支援教育における災害対策を具体的に提言します。
【本書を立ち読みする】
教育と医学 2019年11・12月号
(第67巻9号 通巻795号)
特集・特別支援教育の到達点とその将来

特別支援教育が始まり10年以上が経過しました。障害をもつ子どもだけでなく、病弱の子ども、日本語指導が必要な子どもなど、幅広く「特別な支援を必要とする子ども」に対して何ができるかを考えます。
【本書を立ち読みする】

 

b. 障害種別(視覚障害 聴覚障害 肢体不自由 重度重複 病弱)

視覚障害

『五訂版 視覚障害教育に携わる方のために』
◎すぐ役立つ(臨床・実用)
香川 邦生 編著、猪平 眞理、大内 進、牟田口 辰己 著
視覚障害教育の基本を学ぶ必読書。障害特性の理解、教育制度の歴史の変遷と現状、幼児への教育支援、ICT機器や福祉制度の活用といったテーマで解説します。(資格認定講座や大学講義のテキストにも採用実績あり。)
【本書を立ち読みする】
『視覚に障害のある乳幼児の育ちを支える』
◎すぐ役立つ(臨床・実用)
猪平 眞理 編著
視覚に障害のある乳幼児が、健全な心の発達をめざすためには、何が必要か。障害特性を理解し、こまやかで念入りな配慮、保護者への支援について、視覚障害の医療・教育に携わってきた著者らが、具体的に解説します。
【本書を立ち読みする】
『盲児に対する点字読み指導法の研究――点字読み熟達者の手の使い方の分析を通して』
☆もっと学ぶ(理論)
牟田口 辰己 著
視覚特別支援学校での点字指導が減少している今、その指導の専門性の継承は深刻な問題となりつつある。本書は、30年以上にわたる地道な調査に基づき、子どものときから大人になってからへと生涯にわたる点字速度の発達過程を追究。点字教育の重要性と維持・発展を提言する。
【本書を立ち読みする】

肢体不自由

肢体不自由教育シリーズ
『肢体不自由教育の基本とその展開』

◎すぐ役立つ(臨床・実用)
日本肢体不自由教育研究会 監修、徳永 豊、早坂 方志 編著
全4巻シリーズの第1巻。特別支援教育と肢体不自由教育の基本を、日本の肢体不自由教育をリードする執筆陣が解説。大学の教員養成課程でのテキストや、特別支援学校の校内研修で活用されているベストセラーです。
【本書を立ち読みする】
『重度・重複障害児の対人相互交渉における共同注意――コミュニケーション行動の基盤について』
☆もっと学ぶ(理論)
徳永 豊 著
乳幼児期において、子どもがコミュニケーションの基盤である「共同注意」を獲得することは、最も重要な発達課題の一つです。本書は、この「共同注意」を核として、子どもの対人相互交渉がどのように発達するかを、障害の重い子どもの事例研究から考えます。
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重度重複

『障害の重い子どもの目標設定ガイド――授業における「学習到達度チェックリスト」の活用』
◎すぐ役立つ(臨床・実用)
徳永 豊 編著
重度・重複障害の子どもの日々の授業をどう評価し、目標設定をしたらよいか。現在、多くの特別支援学校などで導入されてきている「学習到達度チェックリスト」。本書ではこの画期的なツールの使い方を解説します。
【本書を立ち読みする】
『障害の重い子どもの発達理解ガイド――教科指導のための「段階意義の系統図」の活用』
◎すぐ役立つ(臨床・実用)
徳永 豊、田中 信利 編著、立岡 里香 著
教育現場の声に応えた「障害の重い子どもの目標設定ガイド」の姉妹編。前作では十分にとり上げられなかった「発達段階」という視点から子どもの状態をとらえると、「学習到達度チェックリスト」をさらに活用できます。
【本書を立ち読みする】

病弱

子どものこころと体シリーズ
『学校の先生にも知ってほしい 慢性疾患の子どもの学校生活』

◎すぐ役立つ(臨床・実用)
満留 昭久 編
慢性疾患をもつ病弱児童が学校生活を送るにあたり、保護者と学校関係者が知っておくべき基礎的な知識を収録。対象疾患:腎疾患、てんかん、心臓病、小児がん、膠原病、糖尿病、血友病、慢性頭痛、起立性調節障害(OD)。
【本書を立ち読みする】

 

2. 子どもの心(児童心理、心理臨床を中心に)

子どもは心の問題を抱えていても、周囲にSOSがなかなか出せません。ここでは主に、教師や保護者の方を対象に、「子どもにどう関わることがよいのか」を児童心理(発達心理学)や臨床心理学から解説する本を紹介します。

a. 児童心理

『子どものこころに寄り添う営み』
◎すぐ役立つ(臨床・実用)
村瀬 嘉代子 著
対人援助職者から絶大な支持をうける著者のエッセイ集。子どもとの交流をさりげなく綴りつつも、子どもとの関わり、他者の心とどう向き合うことができるのか。稀代の臨床家の真髄を感じられる、癒しの一冊。
【本書を立ち読みする】
子どものこころと体シリーズ
『学校の先生・SCにも知ってほしい 不登校の子どもに何が必要か』

◎すぐ役立つ(臨床・実用)
増田 健太郎 編著
子どもはなぜ学校に行かれなくなったのか。不登校をどのように理解し、具体的にどう対応したらよいのか。教育学・臨床心理学・精神医学の専門家が、家族、学校の先生やSCのために、わかりやすく解説します。
【本書を立ち読みする】
教育と医学 2019年9・10月号
(第67巻8号 通巻794号)
特集・現代のいじめ問題を多角的に考える

古くて新しい問題である「いじめ」。ネットの影響による複雑化・多様化も深刻です。改めて、この問題とその対応・予防策を七名の論者が論じます。
【本書を立ち読みする】

 

b. 臨床心理学

『人間関係の理解と心理臨床――家庭・園・学校・施設・職場の問題解決のため』
◎すぐ役立つ(臨床・実用)
吉川 晴美、松井 知子 編著、田尻 さやか、中村 洋子、羽田 里加子、柳瀬 洋美、横山 太範、義永 睦子 著
心が傷ついたり、悩んだり。人間関係がその要因であることは多いものです。人間関係の問題解決法を主に、心理臨床家をめざす方々にむけて、カウンセリング(心理臨床・教育)の基本を学ぶための書。
【本書を立ち読みする】

 

3. 発達障害(児童精神医学、小児医学を中心に)

近年、発達障害という概念が一般に浸透してきていますが、未だ誤解や偏見も少なくありません。ここでは主に、子どもの「生きづらさ」に寄り添い、共に考えて改善を求めるという立場から、この分野をリードする児童精神科医や精神科医の本を紹介。また関連性が深い小児医学の本も紹介していきます。

a. 児童精神医学

『遠城寺式 乳幼児分析的発達検査法 解説書』九州大学小児科改訂新装版
◎すぐ役立つ(臨床・実用)
遠城寺 宗徳 著
乳幼児の発達状態や特長を分析・測定するスクリーニング検査『遠城寺式乳幼児分析的発達検査法』の解説書です(乳幼児の健診などで活用されています)。すべての検査項目についての簡略な説明と、年齢ごとの通過率が示されています。絵カードなどの付録付き。
【本書を立ち読みする】
子どものこころと体シリーズ
『発達障害の疑問に答える』

◎すぐ役立つ(臨床・実用)
黒木 俊秀 編著
発達障害の諸説あるなか、役立つ(正しい)情報を提供するために、小児科医、精神科医、臨床心理士、教育学者などの、発達障害に携わる第一人者が基本を解説。保護者はもとより、教師にとっても必読の書。
【本書を立ち読みする】
『支援から共生への道――発達障害の臨床から日常の連携へ』
◎すぐ役立つ(臨床・実用)
田中 康雄 著
発達障害の子どもたちの保護者から絶大な信頼を受ける児童精神科医、田中康雄先生のエッセイ。目の前の子どもの「生きづらさ」に寄り添う姿勢や、周囲の人々を巻き込んで子どもを支える工夫など、ドラマのようなエピソードの数々に心打たれます。
【本書を立ち読みする】
『支援から共生への道 Ⅱ――希望を共有する精神医療を求めて』
◎すぐ役立つ(臨床・実用)
田中 康雄 著
大学を去り、活動の中心を臨床へとシフトした著者。自分は何ができるのかを自問自答しつつ、「生きづらさ」に伴走する著者の姿から、児童精神科医のひとつのあり方がみえてきます。待望の続刊。
【本書を立ち読みする】
『子どものこころの不思議――児童精神科の診療室から』
◎すぐ役立つ(臨床・実用)
村田 豊久 著
日本の児童精神医学および自閉症臨床の開拓者である村田豊久先生。乳幼児期から思春期までの発達段階に合わせて、発達障害や心の問題を取りあげ、一般の方がわかりやすいように解説する、不朽の名著。
【本書を立ち読みする】
『子どものうつ病――理解と回復のために』
◎すぐ役立つ(臨床・実用)
猪子 香代 著
子どものうつ病の場合、落ち着きが無くなったり、ゲームに没頭したりと、大人とは異なった行動が指摘されています。子どものうつ病の臨床経験が豊富な著者が、症状の特性や関わり方などを解説します。
【本書を立ち読みする】
教育と医学 2020年11・12月号
(第68巻6号 通巻801号)
特集・演劇的手法で発達と学びを支える

心理臨床や教育の現場で、心の育みや癒しを目的として、演劇的なアプローチが注目されています。幼児期・児童期における実践だけでなく、生涯発達支援や、発達障害など対象者の特性に応じた実践、また身体障害者の表現活動など、幅広い実践を紹介します。
【本書を立ち読みする】
教育と医学 2020年9・10月号
(第68巻5号 通巻800号)
特集・読み書き支援の最前線――そのメカニズムと難しさ

「読み書き」に難しさを示す子どもをどう支援していけばよいでしょうか。読む、書くという行動のメカニズム、またその難しさを踏まえた効果的な支援について、当事者の苦労や実践を交えて考えます。
【本書を立ち読みする】
教育と医学 2020年3・4月号
(第68巻2号 通巻797号)
特集・ ひきこもりと向き合い、支援する

「8050問題」が大きな社会問題となっていますが、ひきこもりの背景や経緯、状況は実に多様であり、したがって対応や支援も多様である必要があります。社会全体で取り組むべき「ひきこもり」について、支援の最前線を紹介します。
【本書を立ち読みする】
教育と医学 2020年1・2月号
(第68巻1号 通巻796号)
特集・アタッチメントと発達支援――その意義と限界

「アタッチメント」という用語が馴染みあるものになってきた一方、この語をめぐっては誤解や拡大解釈なども生じています。改めてアタッチメント理論を整理するとともに、どのように実際の支援に活かせるのかを考えます。
【本書を立ち読みする】
教育と医学 2019年7・8月号
(第67巻7号 通巻793号)
特集・最新の発達障害支援

現在さまざまな環境整備が進められている発達障害について、現状と課題を整理するとともに、生涯発達の軸に沿った支援やアセスメントの考え方、実践を第一線の専門家が論じます。
【本書を立ち読みする】

 

b. 小児医学、その他

子どものこころと体シリーズ
『学校の先生にも知ってほしい アレルギーの子どもの学校生活』

◎すぐ役立つ(臨床・実用)
西間 三馨 編著
給食で子どもが亡くなるという事故をうけ、文科省は学校給食の対応を見直しました。これに合わせ、専門家が各種アレルギーの基本や学校給食ガイドラインを解説します。学校の先生にぜひ知ってほしい知識満載です。
【本書を立ち読みする】
『小児失語症の言語回復――ランドー・クレフナー症候群と自閉症の比較から』
☆もっと学ぶ(理論)
星 浩司、宮里 恭子 著
小児期に発症するてんかん性失語症のランドー・クレフナー症候群(LKS)に着目し、脳損傷や脳波異常を伴う小児失語症との比較、さらに自閉症との比較により、LKS児の発話を促すための医療的介入法を提案する研究書。
【本書を立ち読みする】
『こころをつなぐ小児医療』
☆もっと学ぶ(理論)
満留 昭久 著
てんかんの分野で高名な小児精神科医の満留昭久先生が、長年の臨床で出会った子どもや保護者とのエピソードとともに、医療現場の方々へ、医療とは何か、何を学び生かしていくべきか、あつい思いを綴ります。
【本書を立ち読みする】

 

4. 子どもの学び、授業(教育学、教育問題を中心に)

子どもの学びを支える教育現場と教育制度。ここでは教育現場に携わる方を対象に、授業設計や学級経営などに役立つテーマ、および昨今クローズアップされている教育現場や教育制度の問題を扱った書籍を取り上げます。

a. 授業設計

『クリエイティブ・ラーニング――創造社会の学びと教育』
☆もっと学ぶ(理論)
井庭 崇 編著、鈴木 寛、岩瀬 直樹、今井 むつみ、市川 力 著
これからの学校は、「つくる」経験を積む場となり、教師は生徒と一緒に問題に挑戦する仲間となる――。本書は、クリエイティブ・ラーニングの可能性について、教育界のフロントランナーたち(鈴木寛、岩瀬直樹、今井むつみ、市川力の4氏)と考えていきます。
【本書を立ち読みする】
教育と医学 2020年5・6月号
(第68巻3号 通巻798号)
特集・ 多様性を認める学級づくり

外国にルーツを持つ子どもたち、性的マイノリティの子どもたち、また特別なニーズを持つ子どもたちの急増に伴い、これまで以上に「多様性」への対応が指摘されています。そもそも一人ひとりが「多様」である子どもたちのあり方を認める学級づくり、学校づくりについて展望します。
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b. 教育学、教育問題

『「学ぶ力」を取り戻す――教育権から学習権へ』
☆もっと学ぶ(理論)
寺脇 研 著
ミスター文部省とも呼ばれた寺脇研氏が、2008年秋から2012年3月に起きた、学校教育に関わる問題(教育基本法改正、教員免許更新制、東日本大震災、義務教育の無料化etc.)を取り上げ、教育のすすむべき道を提言します。
【本書を立ち読みする】
教育と医学 2020年7・8月号
(第68巻4号 通巻799号)
緊急特集・社会不安のなかで子どもを支える

新型コロナウイルス感染拡大に伴う突然の休校要請から再開した学校では、手探りの対応が続いています。このなかで子どもたちとどのように接したらよいのか、その育ちや学びをどう支えていったらいいのか、本誌編集委員が論じます。
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