【テーマで読む】いま世界で何が起きているのか――政治・社会を見通すための34冊

グローバル化は人々に多くの恩恵をもたらした一方で、格差や社会分断を生みました。

各国で権威主義が台頭、移民・難民排斥の動きも強まっています。

また国際関係も変化を迎えています。

国内問題に追われるアメリカ。近隣地域と対立を強める中国。アジア台頭と存在感を弱める欧州。

そして人の移動を阻む新型コロナウイルス流行。今まさに民主主義は挑戦を受けています。

ここでは10のテーマから、私たちが生きる激動の時代を見通すヒントとなる本をご紹介します。

 

1. 民主主義の危機と権威主義の台頭
2. 内向化するアメリカと人種問題
3. 台頭する中国と東アジア
4. 混迷するヨーロッパ
5. アジアのなかの日本
6. 戦争と安全保障を考える
7. メディア、世論とフェイクニュース
8. 分断化する世界と格差社会
9. 移民・難民をどう捉えるか
10. 感染症と国際政治

 

1. 民主主義の危機と権威主義の台頭

イギリスのEU離脱、ポピュリズムの隆盛、アメリカのトランプ大統領誕生――。「民主主義」の価値観は、いまなぜ動揺し、世界は混乱しているのか。民主主義や法の支配を脅かす新たな権威主義体制の台頭について考えます。

『暴政――20世紀の歴史に学ぶ20のレッスン』
ティモシー・スナイダー 著、池田 年穂 訳
気鋭の歴史家ティモシー・スナイダーが、現在、世界に台頭する圧政の指導者に正しく抗うための20の方法をガイドする。
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『ナチズムは再来するのか?――民主主義をめぐるヴァイマル共和国の教訓』
アンドレアス・ヴィルシング 編、ベルトルト・コーラー 編、ウルリヒ・ヴィルヘルム 編、板橋 拓己 監訳、小野寺 拓也 監訳
現代を覆うポピュリズム、排外主義、権力に同調するメディア。わずか14年でナチズムに破壊されたヴァイマル期の経験から、現状に警鐘を鳴らす。
【本書を立ち読みする】
『自由なき世界――フェイクデモクラシーと新たなファシズム』上・下
ティモシー・スナイダー 著、池田 年穂 訳
法の支配を無効化し、民主主義を混乱に陥れ、新たな権威主義体制を築くプーチン。その思想に鋭くメスを入れ、右傾化する世界の実態を捉える世界的な話題作。
【上巻を立ち読みする】
【下巻を立ち読みする】
『プーチンのユートピア――21世紀ロシアとプロパガンダ』
ピーター・ポマランツェフ 著、池田 年穂 訳
プーチンはカネと権力に塗れたシュールな世界で、新たな独裁体制を築いた。クレムリンに支配されたメディアの内側から、ロシアのプロパガンダの実態を描く。
【本書を立ち読みする】
『失われた民主主義――メンバーシップからマネージメントへ』
シーダ・スコッチポル 著、河田 潤一 訳
19世紀から9.11後に至る、アメリカの草の根の市民団体の変容を分析。市民社会と民主主義再興へのロードマップを示す。
【本書を立ち読みする】

 

 

2. 内向化するアメリカと人種問題

自国第一主義を標榜するトランプの登場により、極端な内向化、保守化が顕在化したアメリカ。2020年5月にはミネアポリスで黒人男性が警官に殺害された事件をきっかけに、抗議デモが全世界に拡大しました。混乱が激化するアメリカの社会的背景を探ります。

『世界と僕のあいだに』
タナハシ・コーツ 著、池田 年穂 訳
アメリカにあって黒人であるということ、この国の歴史を、この肉体とこの運命を生き抜くことを説く、父から息子への長い長い手紙。バラク・オバマ氏推薦。
【本書を立ち読みする】
『実験国家 アメリカの履歴書――社会・文化・歴史にみる統合と多元化の軌跡』第2版
鈴木 透 著
建国の理想と不平等な現実との落差。トランプが大統領に選ばれる理由。いまだ完成しない「実験」国家アメリカを鮮やかに描く通史。
【本書を立ち読みする】
『アフター・アメリカ――ボストニアンの軌跡と<文化の政治学>』
渡辺 靖 著
アメリカ最古で最上の名門「ボストンのバラモン」。アイルランド系移民家族「ボストン・アイリッシュ」。2つの世界を通してアメリカ市民社会の最深部を描く。
【本書を立ち読みする】
『アメリカ大統領と南部――合衆国史の光と影』
奥田 暁代 著
植民地期から2000年代まで、南部との係わりが特に深かった歴代アメリカ大統領について、彼らが南部といかに向き合ったのかを細密に描写する。
【本書を立ち読みする】

 

 

3. 台頭する中国と東アジア

めざましい経済成長をとげ、国際的にも発言力を増す中国の行動原理とは? 歴史的背景、国内政治の力学、近年の軍事力の変化などから「中国的思考」の深層を読み解きます。

『中国「強国復権」の条件――「一帯一路」の大望とリスク』
柯 隆 著
「目覚めた獅子」中国が生み出す、国際社会での圧倒的なプレゼンス。そこに潜む矛盾と今後のゆくえを中国生まれの著者が解剖する。
【本書を立ち読みする】
『中国対外行動の源泉』
加茂 具樹 編著
大国意識を前面に押し出す中国の対外行動の原理とは何か。国際的な要因と国内政治という二つの面から、詳細に解明する。
【本書を立ち読みする】

 

 

4. 混迷するヨーロッパ

反移民の声が衰えず、ポピュリズム政党への支持が増え続けるヨーロッパ。台頭する極右ポピュリズムによる「反革命」の動きのなかで、内部的危機に直面するヨーロッパの今について考えます。

『戦後国際関係史――二極化世界から混迷の時代へ』
モーリス・ヴァイス 著、細谷 雄一 監訳、宮下 雄一郎 監訳
世界はなぜ、冷戦の二極化から混迷の時代へと変化したのか。国際政治の世界的権威が、広い視点から描き出す、戦後史のロングセラー。
【本書を立ち読みする】
『迷走するイギリス――EU離脱と欧州の危機』
細谷 雄一 著
ヨーロッパにとってイギリスは「やっかいなパートナー」なのか?これまでも平坦ではなかったEUとの関係を、歴史的背景からいきいきと描き出す。
【本書を立ち読みする】
『国連と帝国――世界秩序をめぐる攻防の20世紀』
マーク・マゾワー 著、池田 年穂 訳
国連は無力なのか? 覇権を争う帝国の為政者たちは国連に何を託したのか。20世紀ヨーロッパ史の大家マゾワーが描く、「逆説」の国際平和機構論。
【本書を立ち読みする】
『ブラックアース――ホロコーストの歴史と警告』上・下
ティモシー・スナイダー 著、池田 年穂 訳
ヒトラーとスターリンの狭間で、完膚なきまでに国家機構が破壊され、無法地帯に陥ったその地で何が起きたのか。未来の大虐殺に警鐘を鳴らす世界的な話題作。
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5. アジアのなかの日本

戦後、日本とアジアとの関係はどのように変化したのでしょうか。また国際情勢はその時代の日本の政策決定に大きな影響を与えています。歴史認識問題のルーツを知り、未来の関係を築くための足がかりとなる本も揃えました。

『日韓の未来をつくる』
若宮 啓文 著
作家、芸能人、外交官、NGO代表などを相手に、今は亡き辣腕ジャーナリストが両国の過去と未来について忌憚のない対話を繰り広げる。
【本書を立ち読みする】
『世界史の中の近代日韓関係』
長田 彰文 著
日韓関係をめぐって、大国はどのように動いてきたのか? 二国間関係に、米国、ロシア、中国が織りなす力関係から新しい光をあてる。
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6. 戦争と安全保障を考える

戦争はなぜ起こるのでしょうか? 過去の例から戦争を回避できなかった要因をさぐり、地域紛争やテロリズムなど複雑化する現代の難題について理解を深めます。

『入門講義 安全保障論』
宮岡 勲 著
激変する日本の周辺情勢。国際環境や日米関係、さらに核兵器から宇宙・サイバー空間までを理解するための、理論から学ぶ入門書。
【本書を立ち読みする】
『テロリズムとは何か――〈恐怖〉を読み解くリテラシー』
小林 良樹 著
近年国境を越え、複雑化するテロリズムの報道を耳にする機会が増えた。しかし、テロの実体とはいかなるものか。テロの脅威と向きあうためのリテラシーとは何かを考える。
【本書を立ち読みする】
『南方からの帰還――日本軍兵士の抑留と復員』
増田 弘 著
終戦直後、東南アジアの日本兵たちの抑留の実態、復員をめぐる旧連合国の思惑と米国との駆け引きをダイナミックに描き出す。
【本書を立ち読みする】
『 第一次世界大戦への道――破局は避けられなかったのか』
ウィリアム・マリガン 著、赤木 完爾 訳、今野 茂充 訳
それは「不可避」の戦争ではなかった。大国の戦略や思惑が世界規模で交錯する今、学ぶべき「歴史の教訓」がちりばめられた一冊。
【本書を立ち読みする】

 

 

7. メディア、世論とフェイクニュース

SNSなどで拡散されるニュースが世論を変えていく現代。メディアと社会の関係を読み解き、リテラシーを身につけるための方法をさぐります。また現場に立つ人々が発信する側として、ジャーナリズムが直面する課題を語ります。

『入門メディア・コミュニケーション』
山腰 修三 編著
ネットはジャーナリズムをどう変えたのか。報道と世論の関係、表現の自由とプライバシーなど、SNS時代の新しいメディア論の入門書。
【本書を立ち読みする】
『報道現場』
朝日新聞社ジャーナリスト学校 編、慶應義塾大学メディア・コミュニケーション研究所 編
朝日・毎日・東京新聞、東海テレビ、NHKの記者・ディレクターによる現場の取り組みを通じて、報道の意義と新たな可能性を伝える。ジャーナリスト志望者必読の書。
【本書を立ち読みする】
『メディア・社会・世界――デジタルメディアと社会理論』
ニック・クドリー 著、山腰 修三 監訳
私たちの日常や社会は、メディアにどのように影響され、秩序化されているのか。民主主義、権力とメディアの関係を問い直す重要作。
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8. 分断化する世界と格差社会

グローバリゼーションが社会に与えた恩恵は数えきれませんが、それらと引き換えに国内外における経済格差の拡大や社会不安を生みました。世界各国の経済構造はどのように変化し、結果、格差の拡大につながったのでしょうか。

『なぜ中間層は没落したのか――アメリカ二重経済のジレンマ』
ピーター・テミン 著、栗林 寛幸 訳、猪木 武徳 解説
新興国とは対照的に、先進諸国の中間層没落は深刻である。トランプ大統領を生んだ「分断」の原因が、アメリカの政治経済構造にあることを明かす注目の書。
【本書を立ち読みする】
『日本のセーフティーネット格差――労働市場の変容と社会保険』
酒井 正 著
働き方の多様化が進んでいるにもかかわらず、社会保険は従来の正規雇用を前提とした制度のままである。いま「皆保険」に生じている綻びに警鐘を鳴らす。
【本書を立ち読みする】
『分断と対話の社会学――グローバル社会を生きるための想像力』
塩原 良和 著
加速するグローバル化のなかで効率化し分断され、常に自己革新を迫られる現代社会。互いに理解し共生していくために必要な「批判的想像力」を養うための書。
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9. 移民・難民をどう捉えるか

かつて、人の移動がこれほど活発な時代はありませんでした。移民・難民がめずらしくなくなるにつれて、人々は肌の色や人種を理由に対立を深めています。私たちは異質な他者とどう共生していけばよいでしょうか。

『移民とAIは日本を変えるか』
翁 邦雄 著
人口減少日本の衝撃的な未来が予想されているが、解決策として移民に期待する向きは少なくない。AIとの関係性も含め、その社会的影響を考える。
【本書を立ち読みする】
『いのちに国境はない――多文化「共創」の実践者たち』
川村 千鶴子 編著
近年海外にルーツをもつ市民の増加によって、「日本人」は多様になった。多文化共創の実践が進む学校、企業、医療現場の実態を明かす。
【本書を立ち読みする】
『「難民」をどう捉えるか――難民・強制移動研究の理論と方法』
小泉 康一 編著
2019年、戦争や迫害から逃れた難民は7000万人を超え、過去70年で最多となった。緊切の課題である難民問題の研究方法や理論を提供する手引書。
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10. 感染症と国際政治

かのビル・ゲイツは、数年前から、今後世界が最も死者を出すものは戦争ではなく、疫病のパンデミックであると警告していました。また感染症を契機とした国家間対立も起こっています。私たちは感染症といかに付き合っていけばよいのでしょうか。

『ノー・タイム・トゥ・ルーズ――エボラとエイズと国際政治』
ピーター・ピオット 著、宮田 一雄 訳、大村 朋子 訳、樽井 正義 訳
エボラやエイズも当初未知の感染症であった。世界で猛威をふるう感染症と、個人そして社会がどう対峙すべきか、今まさに多くの示唆を与えてくれる。
【本書を立ち読みする】
『エイズは終わっていない――科学と政治をつなぐ9つの視点』
ピーター・ピオット 著、宮田 一雄 訳、樽井 正義 訳
今も毎日約5千人が感染し、3千人が亡くなるエイズ。その終結に向け、科学と政治はどう関わり合うべきか。元UNAIDS 事務局長が大学生に向けて行った熱血講義。
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